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商品開発ストーリー

<前編>成功確率5%。添加物を使わない、飴づくりへの挑戦

<前編>成功確率5%。添加物を使わない、飴づくりへの挑戦

発売以来人気を博した『マヌカハニー+ハーブキャンディ』。2022年秋に満を辞して『だいじょうぶなもの』から『レザーウッドハニー+ハーブキャンディ』としてリニューアル。今回は特に一般的な飴に含まれる水飴やグラニュー糖などを使わずに製造。「使わないもの」にこだわり抜きました。

そのこだわりを創業117年の熟練の技で実現してくれた、製造パートナーであるライオン菓子株式会社。飴づくりのプロフェッショナルが口々に、「こんな飴づくりは初めてです」と語った今回のリニューアル。ライオン菓子開発担当と同社二本松工場の製造担当の方々に、たかくら新産業開発担当の高倉と森を交え、開発の全貌を振り返りました。

妥協が一つもない飴づくりのはじまり

——リニューアル着手から2年。無事完成しましたね。振り返ってみて、どうでしたか?

高倉:今回の商品開発で一番嬉しかったのが、ライオン菓子のみなさんが、「妥協が一切なかった」と言ってくれたことなんです。ものづくりにおいては、どうしても妥協しないといけない場面がありますが、今回はなかったと。

開発担当:価格や原料などの製造条件によって、原料の種類や品質を変えることはよくあります。でも今回はそういったことが一切なかったですね。10年以上ものづくりをしていますが、こんなに妥協が全くない仕事は初めてですね。

高倉:それってすごいことだよね。そう言ってもらえると、本当にありがたいです。

——今回初めてライオン菓子さんとの取り組みでしたが、きっかけはなんだったんですか?

開発担当:セルフケアが叫ばれる昨今にあって注目されていた、はちみつののど飴を開発したいと思い立ったのがきっかけでした。一般的に健康作用が高いと言われているのはマヌカハニーですが、あらゆるはちみつを取り寄せて調べ、試食し、専門家にも話を伺った結果、レザーウッドハニーに辿り着きました。取り扱っている会社を探して見つけたのが、たかくら新産業さんです。

高倉:それが最初の出会いでしたね。結果的にライオン菓子さんは自社でつくることを断念されて。それなら私たちの商品をつくってくれないかなと相談したのが、今回のリニューアルにつながりました。でも、ライオン菓子さんはあまりOEM(編注:他社ブランドの製品を製造すること)をやってないんですよね。

開発担当:基本的には自社商品の製造がメインです。新規受託案件は年に1件あるかないかですね。ありがたいことにご依頼をいただくことは多いのですが、お断りすることがほとんど。2022年で創業117年ですが、ずっと自社商品の開発と販売が中心です。

ライオン菓子株式会社。1905年東京都港区麻布に篠崎商店(水飴の瓶詰卸商)として創業。1964年に「ライオネスコーヒーキャンディー」を発売、ロングセラー商品に。「健康貢献」を理念に掲げ、独自の飴づくりを行っている。1988年には福島県二本松市に二本松工場を新設。写真は工場入り口にあるライオン像。今回の飴の製造や取材も二本松工場で行われた。

高倉:どうして今回はやってみようと思ってくれたんですか?

開発担当:商品化を断念した大きな理由は原料の輸送技術でした。オーストラリアのタスマニアから、新鮮な状態で運んでくる必要があるものの、私たちにはその経験もノウハウもありません。規模も大きいわけではなかったので、とてもじゃないですが手を出せる条件ではなくて。だから逆にたかくら新産業さんから「原料をお渡しするので、製造してほしい」と相談されたときは嬉しかったですね。レザーウッドハニーを使った飴づくりの夢が実現できると。

高倉:そっかあ。でもこんなに無茶なボールを投げられるとは、きっと思ってなかったよね。

開発担当:そうですね(笑)。これほど製造が難しい飴になるとは思わなかったです。

「グラニュー糖」「水飴」を使わない無茶ぶり

——ぜひそのあたりのことを詳しく聞かせてください。無茶なボールとのことでしたが、商品開発においては何が一番大変でしたか?

開発担当:主原料にグラニュー糖や通常の水飴(※1)を使わないのが一番難しかったですね。まず原料を探すところから始める必要がありました。原料を仕入れつつ、ラボで試作して、工場で実際に製造できるか。初めて扱う原料ばかりだったので、確認に時間がかかりました。

森:水飴はリニューアル前の飴でも使っていて、「だいじょうぶ」だと思っていました。水飴と聞いても、罪悪感ないじゃないですか。だけど調べれば調べるほど、どうなんだろうと雲行きが怪しくなってきて…。それで、すでに試作が進んでる段階でしたが、「すみません、水飴も使いたくないです」とお願いしたんですよね。

開発担当:グラニュー糖と水飴は飴づくりにおける原料の、基礎中の基礎ですからね。工場の設備も、いかに効率よく砂糖と水飴でつくるかという観点で設計されています。だから今回基礎原料であるグラニュー糖や水飴を使わないので、工程がかなりイレギュラーになりました。

例えば代わりに使うことにした麦芽飴は、スタッフが手で入れてます。今回の麦芽飴は特別に仕入れているので、一斗缶でしか手に入らないんです。さらに下準備として温める必要があり、余計に大変でした。

※1:常時キャンディ量産時に使用する、精製度の高い酵素分解水飴のこと

製造機に麦芽飴を入れるスタッフ。

——既存の設備が応用できるものじゃなかったんですね。

開発担当:そうなんですよ。

森:普通の工場だったら、「設備上、麦芽飴は使えません」で終わりなんですよね。大抵通常の工程に乗らないものは、嫌がります。

開発担当:ああ、そうなんですか。私たちは自社商品の開発が多いので、そもそも「トライしない」という発想はないかもしれません。とりあえず、やってみようと。もちろんトライしてできなかったら、諦めることはあるんですけど。

高倉:水飴の違いに気づく人って、きっと100人いたら1人いるかいないかだと思うんです。だから効率だけ考えたら、手間もコストもかかるから、そのままでいいじゃんとなってしまう。でも私は自分で絶対「だいじょうぶ」と思える商品しかつくらないし、売りたくない。それが「だいじょうぶ」というブランドの理念だし、会社としてのスタンスでもあります。その想いに共感して、一緒に取り組んでもらえたのは嬉しかったですね。

——今回はグラニュー糖や水飴以外にも、「使わないもの」にこだわられていますね。

森:上白糖、三温糖、増粘剤、香料、着色料、酸味料を使ってないですね。

開発担当:一般的な飴にはよく含まれているものばかりですね。

森:ほとんどはそうなんです。ただ、一つひとつの食品に入っている量が少しでも、あらゆるものに入っていたらと思うと、少なくとも私たちは入れたくないと思ったんですよね。

高倉:食品に添加物が含まれている場合、裏面の原材料名に「/(スラッシュ)」以降で記載することが法律上義務づけられています。今回の飴の裏面を見ていただくと、添加物が処方されていないことがわかるかと思います。

リニューアルしたパッケージ。この飴には真ん中の写真に載っている原料しか含まれていない。「使うもの」にも「使わないもの」にもこだわった商品になっている。

開発担当:一番の売りは、レザーウッドハニー本来の美味しさをお客様にお届けできることだと思います。「センターインキャンディ」といって、レザーウッドハニーを飴の中に閉じ込めておくことができます。添加物を使わないので、素材そのままの味を楽しめる。まさに商品名の通り、「採れたてをそのまま食べている」ような感覚を体験いただけます。

——実際に食べてみてどうでしたか?

高倉:本当にレザーウッドハニーの味がしますね。飴の中からレザーウッドそのままがドロっと出てくる。余すところなく、本来の味を再現してくれていますね。

製造担当:ものすごく美味しかったです。香りもいいので、製造準備中もいい気持ちになります(笑)。

高倉:レザーウッドハニーはフレグランスハニーとも言われるんですよ。お花みたいな、いい匂いがしますよね。

製造担当:ミントなどの一般的な香料の匂いって、やっぱりどうしてもキツく感じるんですよね。だから正直あまり準備するときは気が進まないんですけど、レザーウッドハニーの香りであれば、もうぜひという感じです。あの香りは天然ならではだと感じますね。

開発担当:レザーウッドハニーは添加物で味付けすると、おそらく本来のよさを邪魔しちゃうんですよね。だからこそ、今回は添加物を入れない方が美味しいですね。

高倉:添加物が悪いものじゃないんだけど、素材本来の味を追求していったらそうなりますよね。

レザーウッドハニー。オーストラリアのタスマニア島の限られた場所でしか採れない上に、花をつけるまでに100年かかると言われ希少性が高いことから、「幻のはちみつ」とも呼ばれる。

実は5%だった成功確率

——開発の大変さが伝わってきましたが、製造もイレギュラーな工程が多かったんですよね。

製造担当:正直にお伝えすると最初に添加物を使わないと聞いたとき、これはできないんじゃないかなと思いました。今回の商品設計において添加物の使用は必須条件だと思いましたし、経験もありませんでした。現場担当としては、量産化するための製造工程に乗るかどうかをまず考えますが、原料や設備の特性や相性を踏まえて、今回の飴は工程には乗らないなと。

開発担当:今だから言えますが、最初のラインテストの成功率は20〜30%くらいと伝えていたと思うのですが、実は社内的には5%ぐらいでした。

高倉&森:5%だったんですね(笑)。

開発担当:20%でも控えめに伝えたつもりでした(笑)。だから1回目のテストでほとんど仕上がったときには、びっくりしたんですよ。10回以上ラインテストをやることになると思っていたので…。初回でちゃんと形になるとは思わなかったですね。ラインテストの日って、失敗するとテスト中に連絡がくるんですよ。この飴のときは連絡が一向にないから、あれ、これはもしかして成功してるのかなと。

開発担当:何か特別なことをやったわけではないんです。自分たちにできる作業をスタッフと確認しあって、落とし込んだだけ。できることをやっただけ、という感覚ですね。

高倉:それがまさに職人の仕事ですよね。テストの成功確率を聞いたとき、失敗したら成功率は上がるのか聞いたら、「上がります」と言ってくれたよね。上がるんだったらやろうと。何回かやっていたら、絶対成功するじゃんって話をしていたら、一発でしたね。

第2回ラインテストで説明を受ける高倉(左)と森(中央)。

製造担当:工場のスタッフが頑張ってくれたお陰ですね。飴の工場というと全部自動化しているイメージを持たれるかもしれないですけど、実際は意外とスタッフの感覚に頼っている工程も複数あります。

開発担当:手前味噌ですが、みなさんすごいスキルが高いんですよ。職業柄いろんな工場のスタッフを見てきましたが、うちの工場のスタッフはそれぞれがすごく考えて取り組んでいるので、まさに職人ですね。

高倉:創業から117年間培ってきた技術もあるよね。

開発担当:飴づくりって、失敗ばかりですからね。例えばコンビニエンスストアは毎月100商品ほど飴を仕入れていますが、メーカーが提案するのはその8〜10倍近いと言われています。しかも回転率が早く、出入りも多い。個人的に調べたところ、主要な飴メーカーの商品で3年間ずっと残っている商品、1000品中、数品でしたから。

製造担当:本番の生産回数より、ラインテストの回数が多いことは少なくないですね…。

高倉:この飴は3年以上売りましょう。業界の常識をいい意味で打ち破っていきたいですね。

——ラインテストは1回で成功したとのことですが、テストはその後も続きましたよね?

森:第1回ラインテストではセンターインのはちみつの割合が想定よりも少なかったんです。そのままでも決して悪くなかったのですが、食べたときに中からレザーウッドハニーがトロッと出てくる感覚をどうしても出したかったので、より難易度の高いチャレンジをすることにしました。

開発担当:結果的に高倉さんと森さんにも立ち会っていただいた第2回ラインテストでは、量産化が難しいとの結果になりました。この場合、通常だと妥協して成功している1回目の配合でまずは発売しようとなるのですが、高倉さんはテスト直後の振り返りの場で発売延期を決めましたね。あの決定には私含め、現場スタッフ一同とても驚きました。

高倉:やっぱり中途半端なものをお客様に出したくなかったので、だったら発売を延期しようと決断しました。妥協せず再チャレンジして、絶対いいものを出そうと。

開発担当:そもそも発売に関する決定権を持った人が現場に立ち会うケースは稀ですからね。テスト直後その場で次のチャレンジに向けて再出発できると決まったからこそ、現場メンバー含め皆さんとより一層一致団結できたのだと思います。

工場スタッフが手作業で行う工程も多々見られた。機械が自動でつくるのではなく、人の手によってつくられていることを実感する取材だった。

聞き手・執筆・撮影:中楯知宏

後編はこちら

<後編>成功確率5%。添加物を使わない、飴づくりへの挑戦

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