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女性の一生に寄り添うブランドに。デリケートゾーンケアブランド・Pubicare organic10年の歩み
※Pubicare organicは2023年5月にリニューアルを行なっております。詳しくはこちら。
「フェムテック」という言葉もまだなかった2012年。
女性の子宮に近い大切なエリアを優しくケアしてもらいたいとの想いから、デリケートゾーン専門美容サロンとのコラボで生まれたオーガニックスキンケアブランド『ピュビケア オーガニック(Pubicare organic)』。
6月にはトラブルケア用デリケートゾーンソープ「フェミニン メディソープ」を発売し、ブランドとして進化をし続けております。
そこで今回、新商品の発売を記念して、ブランドの立ち上げメンバーである「ピュビケアサロン白金台」のオーナー姉妹である得田由美子さん(以下、由美子)と得田美奈子さん(以下、美奈子)、そして開発企画担当の高倉による鼎談をお送りします。
ピュビケア オーガニックの誕生
——高倉さんと得田さんたちの出会いのきっかけは何だったんですか?
高倉:僕たちは14年前に『made of Organics』というオーガニックブランドを始めましたが、一番大事なキーワードが経皮吸収(編注:物質が人の皮膚を経由して、体内に吸収されること)だったんです。
経皮吸収の多い部位をケアする商品こそ、オーガニックに変えるべきだとの考えのもと開発したのが、ボディケア、オーラルケア、デオドラントといったラインナップ。おかげさまでブランドは非常に好調でしたが、一方で経皮吸収量の多いデリケートゾーンをケアする商品だけは作りきれていなかったんです。
というのも、全商品の開発を僕が担当していますが、僕自身は男性で女性特有のデリケートゾーンがないので、何を作っていいのか正直よくわかっていませんでした。そんなときに、得田さんたちとお会いする機会があったんです。
由美子:私たちが運営しているデリケートゾーン専用美容サロン『ピュビケアサロン白金台』にお越しいただいたんですよね。ちょうど私たちもデリケートゾーンをケアする商品のサンプルを作っていて、そのことを知って直接会いに来ていただきました。
高倉:得田さんたちはブラジリアンワックスのサロンを日本で初めてされた方たちで、デリケートゾーンをケアする商品の必要性をすごく感じられていたんですよね。それで、こんな商品を作りたいというアイデアを持っていました。
美奈子:そうなんです。2009年にサロンを始めたときは、まだデリケートゾーンのお手入れ方法を知らないお客様が多かったので、海外の情報を集めながらお手入れの方法をご案内していたんです。一方で、実際にケアする商品は国内にはなく、海外から輸入したものくらいでした。
ただ、部位が部位なだけに、安心・安全な国内のブランドの商品が欲しいというお声は根強くて。安心してお客様に勧められる、オーガニックで経皮吸収しても大丈夫なケア商品を作ろうと高倉さんと意気投合して始まったのが、『ピュビケア オーガニック』です。
高倉:僕も得田さんたちのサロンでブラジリアンワックスをやってもらったんですけど、なかなか恥ずかしいポーズで施術されるわけですよ。すっぽんぽんになって、お股を開いて…と非常に非現実な状況の中にいる。普段デリケートなことって人に話しにくいじゃないですか。でもそうした非日常な空間でデリケートな部分を共有していると、その場では相談できてしまうんですよね。
得田さんたちと初めてお話しして印象的だったのが、サロンではすごくいろんな相談をされるけれど、中でもデリケートゾーンのことで悩んでいる人が具体的にたくさんいるんだと話してくれて。そんなに困っている人たちがいるなら、僕たちがオーガニックにこだわって商品を作ったらいいのではと思ったのが、ブランドの始まりでした。
——意気投合してからは、どのように商品開発を進めたんですか?
高倉:最初は得田さんたちがすでにご縁があったイタリアで作り始めました。僕たちは当時からオーガニック先進国であるオーストラリアでものづくりをしていましたが、残念ながらデリケートゾーンをケアする習慣はあまりなかったんですよね。一方、イタリアはデリケートゾーンをケアする習慣が根付いている先進的な国でした。
その後無事商品は完成し、メディアの方々にブランド立ち上げの発表会を実施したのですが、当時はまったく相手にされませんでした。
「すごくおもしろいね」とは言ってくれるのですが、「デリケートゾーンのケアをする発想自体が日本にはないので、どうやって売っていいのかわからない」と断られることが多かったです。ブランドとしてはリリース後、真冬の時代が長く続きましたね…。
由美子:商品のよさを伝える前に、まずは専用のソープで洗うことの重要性を理解してもらうことからでした。そこにかなり時間がかかりましたね。
高倉:「ボディソープで洗えばいいんじゃない?」という人が圧倒的に多かったですからね。
そこで僕たちは商品自体をPRするのではなく、デリケートゾーンをケアすることが女性にとってどんなメリットがあるかを伝えるために、「デリケートゾーンケアアンバサダー講座」という勉強会を始めました。そうやって地道にデリケートゾーンケアの大切さを伝えています。
※Pubicare organicは2023年5月にリニューアルを行なっております。詳しくはこちら。
——商品を使ったお客様からはどんな反響がありましたか。
由美子:最初は香りのよさについての感想が多かったです。泡タイプにリニューアルしてからは洗いやすくなりましたね。ナプキンかぶれで肌の弱い人には、泡だと肌に優しくて嬉しいとか。
特に小さいお子さんは、ボディソープで洗うと沁みて痛がることがあるんですが、そうした痛みがないというお声もいただきました。
高倉:『ピュビケア オーガニック』の商品は何度かリニューアルをしているのですが、最初のリニューアルはフードグレードかつ泡タイプにしたことでした。前者は成分を徹底的にオーガニックでクオリティの高いものに、後者はそれまでは手のひらで泡立てるタイプのソープでしたが、それをフォーミングソープに変えたんです。やっぱり評判はすごく変わりましたよね。
由美子:そうですね。やはり少し複雑な形状をしている部位なので、どうしても洗い残しが多いんですけど、泡だとすごく洗いやすいんですよね。
プロフェッショナルなデリケートゾーンケアをしている私たちだからこそのソリューションだったと思っています。最近は泡タイプが多くなりましたね。
高倉:最近はもう泡が主流ですね。新商品を開発するときにはいつも得田さんたちと相談をして、サロンのお客様の声を聞きながら改良し続けることを今でもやっています。
美奈子:サロンのお客様に直接お話を聞いて、意見を商品にフィードバックできるのが強みですよね。マーケティングのプロであるサロンと、ものづくりのプロであるたかくら新産業。このコラボだからこそ、常にお客様に寄り添った革新的な商品を作れているのだと思います。
女性の一生を健やかに導く
——これまでの歩みを振り返って、デリケートゾーンケアについて変化を感じることはありますか?
高倉:僕たちはサロンのお客様の声以外にも、産婦人科の先生や助産師の方とも意見交換をするようにしています。特にどの先生もおっしゃるのが、適切なpH値である専用のケア商品で、デリケートゾーンを優しく泡できれいに洗うことがとにかく大事だということ。
現代人のデリケートゾーンには「かぶれ」「かゆみ」「におい」という“三大悩み”があるんですが、ほとんどが雑菌によるもの。最近はアンダーヘアがない人も増えてきているそうなんですけど、デリケートゾーンにヘアがある場合、その中に菌が繁殖しやすいんです。
体の構造上、経血やおりものが出ますし、ナプキンやおりものシートを被せることも多いです。そうすると、栄養豊富で暖かくて湿気がある、雑菌にとっては理想的な環境になってしまう。 その状態が長ければ長いほど、雑菌は繁殖し、臭いやかぶれも出てきます。
ただ、産婦人科の先生方が口を揃えておっしゃるのが、少しでも汚れを拭くだけでかなり改善すると。そうしたことを知ってもらうことにも時間がかかりましたが、最近は知っている人も増えてきましたね。
由美子:潜在的に悩んでいる人は多いけれど、日常で話題になることもなく誰かに相談する機会もないので、悩みを抱えたまま我慢することが普通だったんです。最近はメディアでもデリケートケア商品を紹介してくれますし、売り場でも専用コーナーができたりと目にしやすくなったので、「その悩みはこうやって解決すればいいんだ」というのが徐々に伝わるようになりました。
特に「フェムテック」というワードが流行りだしてからは、女性の意識もかなり変わってきてるように感じますね。女性が自分自身の体のこと、生理や不妊、性病といったことに深く意識を向けるきっかけになり、社会的にも大きなムーブメントになったのはとてもいいことです。
高倉:やっぱりフェムテック関連の問い合わせは社内でも圧倒的に多いですね。そうしたムーブメントが起こることで、自分には関係ないと思ってた人がケアするようになっていくのは素敵なことだなと思います。
由美子:比較的若い世代はフェムテックで、50〜60代の人たちは介護脱毛をきっかけにデリケートゾーンをケアする流れを感じますね。
——介護脱毛ですか?
由美子:介護されるときにデリケートゾーンにヘアがあると、菌が繫殖して臭いがきつくなったり、排泄物が絡まったりします。介護する人が不快な思いをしないように、介護前にきちんと自分のデリケートゾーンを清潔にしておく。介護に向けた準備として脱毛することを「介護脱毛」と呼ばれていて、脱毛するきっかけの一つになっています。
高倉:おもしろいなと思ったのが、髪の毛が白髪になるとアンダーヘアも白髪になるじゃないですか。するとレーザーが反応しないそうなんです。だから毛が黒いうちに早めにやりましょうと言われていますね。
由美子:レーザー脱毛はそうですね。逆に白髪だけが残っていて、その脱毛をしにブラジリアンワックスをする人もいます。最近だと70代のお客様が、娘さんに連れて来られることも珍しくありません。
高倉:老人ホームに入る前にやっておいてねと。
由美子:そうですね。お母さん世代だとお子さんから、「自分が介護する前にやっておいてね」と言われ来られる人もいます。きっかけは様々ですが、今はどの世代でもデリケートゾーンをケアすることに対する認知度はかなり高まったと感じますね。
デリケートゾーンをケアすることは、自分を大切にすること
——『ピュビケア オーガニック』のブランドコンセプト「女性の一生を健やかに導く」の通り、まさに若い人から介護を見据えた人まで、一生をケアしていく流れになっていますね。
美奈子:10代の娘さんからお母さん世代、シニア世代とそれぞれ女性の年齢ステージは違いますが、悩みは共通しているものから年代ごとに違うものもあります。女性の体って、東洋医学的には7年周期で変わると言われているんです。それぞれの周期や年代に合わせた商品で、女性の一生に癒しを与えられるブランドでありたいですね。
高倉:女性のデリケートゾーンのこと、日本では「アソコ」とも言うじゃないですか。男性だと「ムスコ」と言ったりしますが、親近感が雲泥の差ですよね。アソコってどこだろうと。おそらく日本ではデリケートゾーンのことをアンタッチャブルな、あまり語ってはいけないものとして認識されてきたんじゃないかな。だから、ちゃんと教育もされないし、公に語ることも憚られる風潮がある。
でもデリケートゾーンをケアすることって、自分を大切にすることだと思うんですよ。自分の体を、自分でちゃんと大切にするという気持ちを持つのは、すごく大事なこと。そして、大事なことだからこそ、様々なケア商品がある中で、デリケートゾーンのケアだけはオーガニックにしてほしいんですよね。
ケアがきっかけで、自分のことをしっかり考えるきっかけになってほしい。『ピュビケア オーガニック』のコンセプトにはそんな想いも込められています。
由美子:フェムテックのトレンドも含め、最近は自分の体を自分でコントロールしていこうという意志が感じられますよね。「生理痛がひどいけど、しばらく横になっておこう」ではなく、必要なら病院に行って診てもらう。不妊治療をする前に、自分の子宮の状態を整えておく。そうした婦人科系の疾患も、自分自身で管理していくという意識改革が起きています。
高倉:産婦人科の先生いわく、「女性って自分のデリケートゾーンをよく見たことがない人が多い」そうなんです。そもそも、肌だと思ってない人も多いですよね。肌だと思えば、スキンケアと同じで、ケアする必要性を感じる人も多いと思います。
ケアの方法自体は「洗う」「保湿する」「清潔にする」ことが基本で、これは10代でも70代でも同じ。ケアをしながら、自分で見て知っていくことが大事なんじゃないかな。
由美子:お風呂に入ってシャワーを浴びる人が多いと思うんですけど、それで洗えてないとか、不利益的なことを自分が感じる機会って少ないんですよね。必要性をどうしても感じにくいですよね。
高倉:きれいに洗えていないことが、自分が抱えている別の悩みにつながっていると考えられる人は少ないですよね。
例えば、臭いがするからゴシゴシ洗う人がいるそうなのですが、すると膣内環境を整えてくれていた常在菌が死んでいって、無防備になってしまうんです。結果的にさらに膣内環境が悪化してしまい、臭いが出てしまう。よかれと思ってやったことが、実は真逆の結果を生むこともあります。そうした正しいケアの方法をしっかり伝えていくことも大事ですよね。
デリケートゾーンケアのパイオニアとして
——これから『ピュビケア オーガニック』をどんな風に進化させていきたいですか?
高倉:清潔にしたり、保湿したりするだけでなく、もっとメリットがある商品にしていきたいですね。デリケートゾーンのアンモニア臭って、部位的にもどうしてもケアしづらいんですよね。もちろん『ピュビケア オーガニック』の商品でケアすることができるんですが、清潔にするだけじゃなくて、臭いをケアできる成分を入れられたら素敵だなと思っていて。次にリニューアルするときにはトライしたいですね。
姉妹:コットンシートに消臭成分を入れたいですね。
由美子:「Pubicare」は「Pubic+care」という私たちの造語で、ピュービックヘア(Pubic Hair・アンダーヘア)のお手入れのことなんですね。これまでは美容要素が強めの商品展開をしてきましたが、次は一つステージが変わって、より婦人科系のQOLを上げられる商品を広げていきたいですね。
美奈子:ブランドを始めたころは全然見向きもされなかったけど、今はトレンドの追い風もあります。デリケートゾーンケアのパイオニアとして、これからもちゃんと一番を走り続けていきたいですね。
高倉:「デリケートゾーンのパイオニアです」と自分たちで言うのも少し恥ずかしい気持ちもあるけど、実際僕たちが日本で初めてケアする商品を作ったから間違ってはいないよね。
美奈子:パイオニアだからこその苦労もいろいろ重ねてきたので、フェムテック業界をけん引していけたらいいですね。
高倉:フェムテックという言葉がない時代から、ずっとやってきましたからね。これからも引き続き、女性のQOL向上に貢献できるブランドであり続けていきましょう。
聞き手・構成・執筆:中楯知宏